伝統を守った墨の製法



松煙墨作り・動画(この動画は松煙墨作りの教材として文部省が製作したものです)
 墨は原則として、墨用の煤(スス)と膠(ニカワ)を練り合わせてつくられるものです。よい墨をつくるには、まず原料を選別する目が厳しくなければなりません。また、練り混み、型入れ、型出し、乾燥までの間熟練した技術が必要です。さらに、完成までにかかる約一年間、その間の気候と時間経過を味方につけるカンと根気も大切なものになります。昭和初期の開業以来、墨の原料として最も重要な墨用の煤をつくり続けてきた当工房は、「よい墨用の煤というものは何か」を知り尽くしております。そして長年の研究と経験から体得した墨づくりの技術にも、大きな自信を持っております。当工房の伝統をかたくなに守った墨づくりをご紹介しましょう。
松煙墨の原料は松材と膠
 墨には菜種、胡麻などの液体油を燃やして採った煤でつくられる「油煙墨」と、松材を燃やして採った煤でつくられる「松煙墨」があります。両者は質が違い、それぞれに特色がありますが、歴史の古いのは松煙墨であり、今現在、手に入りにくいのも松煙墨です。松材は油の凝縮した部分(写真左側の3本)。膠は良質のもの(右側にある飴色の棒)を使っています。松煙用の松   松煙用の松2
昔ながらの「障子炊き」を踏襲
 小割にした松材を一本ずつ、焚がまの中でゆっくりと、火が消えないように1日10時間、10日間燃やし続けます、この焚がま(焚がまの炎は美しいもの)が据えられている所が、いわゆる「障子小屋」というもの。
 かつては紙張りの障子で周囲と天井を囲い、松材を燃やした後、障子紙についた煤を採っていました。しかし現在では火炎防止のために、金網の上に耐火性の布を貼ったものを使っています。この煤の採り方が「障子焚き」です。煤について 松煙焚き
 火種を絶やさないように燃やすのが大変。また、障子小屋の壁についた煤を採るのが大変な仕事。体中真っ黒になってしまいます。煤採り作業煤採り作業(2) 当工房では「油煙墨」用煤の採取も手がけています。
煤を練り、膠を加えてさらに練る
 煤の中に含まれた空気を抜くために、乳鉢に入れてよく練ります。そして長時間湯煎して溶かした熱い膠液を少しずつ加えて、煤の中に練り込んでいきます。 このように手作りできるのは、限定生産をしているからです。煤の量、膠の量も正確に計算しています。

純松煙墨 紀州墨 |純油煙墨 大塔 |自然変色 枯茶墨 |超長寿の煤使用 くまの
[HOME]